男女ともに更年期による症状で生活上の問題が生じるのはどんな時でしょうか。
もちろん、つらい症状で趣味やレジャー、日常生活などに支障が出ることはあります。しかし最も深刻なのは、更年期の症状のために仕事を辞めざるを得なくなることではないでしょうか。
この記事では更年期における様々な心身の不調についてお伝えするとともに、性ホルモンの分泌に重要な役割を果たしている副腎や、更年期に欠かすことのできない腸内環境の整え方も併せて紹介します。
また、それぞれのセルフケアを概観しながら、そもそもセルフケアというものが、過酷な働き方を強いられているビジネスパーソンにとって実践可能なものなのかについて考えます。
そして最後に、離職せずに更年期を乗り切る方法について考察してみたいと思います。
女性の更年期障害について
女性の更年期ってなに?
ちなみに閉経とは、月経が完全に停止した状態のことです。
単純に「月経がない=閉経」とは判断できないので、医学的には、最後の月経から1年間、月経が無いことを確認して閉経と判断します。
日本人女性の閉経の平均年齢は50.5歳です(閉経の年齢は40代から57歳ころまで個人差があります)。
以上のことから、自身の更年期がいつ始まったのかを知るには、閉経してみないと分かりません。月経が無い期間が1年続いた時点から振り返って5年前(最後の月経の4年前)から更年期が始まっていたということになります。
ちなみに更年期それ自体は病気でもなんでもありません。女性に必ず訪れるライフサイクルの一期間のことです。
なお、男性には月経がありませんので、女性のように、「誰にでも訪れる、期間が限定された更年期」というものは存在しません。
更年期になると生じる症状について|更年期症状
この急激なエストロゲンの変動によって引き起こされる症状が更年期症状です。主な症状は以下の通りです。
○顔がほてる
○汗をかきやすい
○腰や手足が冷えやすい
○息切れ、動悸がする
○寝つきが悪い、または眠りが浅い
○怒りやすい、すぐにイライラする
○くよくよする、憂うつになる
○頭痛、めまい、吐き気
○疲れやすい、倦怠感
○肩こり、腰痛、手足の痛み etc.
なお男性にも、テストステロンという性ホルモンの急激な減少によって生じる、「更年期症状らしき不調」があることが知られています。(詳細は後述します)
日常生活に支障をきたす更年期症状|更年期障害
明確な診断基準はありませんが、医師が更年期障害であると判断することによって診断がつきます。
SMIスコア(簡略更年期指数)
なお、スコアの高さ自体が更年期障害を示すものではありません。
更年期指数の自己採点の評価法(合計点)
【0~25点】 上手に更年期を過ごしています。これまでの生活態度を続けていいでしょう。
【26~50点】 食事、運動などに注意を払い、生活様式などにも無理をしないようにしましょ う。
【51~65点】 医師の診察を受け、生活指導、カウンセリング、薬物療法を受けた方がいいでしょう。
【66~80点】 長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。
【81~100点】 各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合は、専門医での長期的な対応が必要でしょう。
数字で見る女性の更年期障害
①医療機関への受診により、更年期障害と診断された人の割合
40歳代で3.6%、50歳代で9.1%
②更年期障害の可能性があると考えている、または指摘された人の割合
40歳代で28.3%、50歳代で38.3%
③更年期障害を考えたこと/疑ったことはない人の割合
40歳代で67.0%、50歳代で51.7%
④SMIスコアをみると、「81~100 点」、「66~80 点」を合わせた割合は、40歳代で7.3%、50歳代で9.2%でした。また、これらに「51~65 点」を加えた割合は、40 歳代で17.7%、50歳代で20.0%でした。
※出典:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果
◆更年期障害の診断を受けている女性は100人中4~9人でした。また、更年期障害を考えたことも疑ったこともない女性が半数以上でした。
女性の更年期障害の治療
①ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy=HRT)
エストロゲンを体内に補充します。補充方法は飲み薬、塗り薬、貼り薬があります。
②漢方
加味逍遙散、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散などを中心に、症状に合わせた漢方薬が処方されます。
※どちらも医療保険が使えます。
女性の更年期のセルフケア
※なお、それぞれの根拠や作用機序などの説明は省略しています。さらに詳しくお知りになりたい方は、書籍等でご確認ください。(他のセルフケアも同じです)
●以下の食品を自然の食材から摂る
・ビタミンA、B群、C、D、E、K
・亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム
・たんぱく質
・食物繊維
・不飽和脂肪酸
・発酵食品
●以下の食品を少なめにする
・砂糖
・炭水化物
・加工食品(食品添加物)
●以下の食品を断つ
・トランス脂肪酸
・飽和脂肪酸
・アルコール
・カフェイン飲料
●ぐっすり眠るために以下を行う
・毎日7~8時間眠る
・毎朝同じ時間に起きて朝日を浴びる
・朝食を欠かさず摂る
・日中は日光を浴びて活動的に過ごす
・夜は暗い部屋または間接照明で過ごす
・入浴時は湯船につかる
・ヨガやマインドフルネス(瞑想)を行う
●適度な運動をする
●ストレスを減らす
女性の更年期障害に強く推奨される特有のセルフケア
大豆イソフラボンはエストロゲンと構造が似ており、更年期症状を軽減する効果が期待できます。
※出典:『男女で知っておきたい更年期』 佐々木春明/甲賀かをり監修 主婦の友社
男性の更年期障害について
ここからは男性の更年期障害について見ていきましょう。
男性の更年期とは?
男性の更年期らしきものは、ある病気によって引き起こされます。その病気とはテストステロンという性ホルモンの急激な減少によって起こります。
この病気は概ね40歳以上の男性に見られますので、「女性でいうところの更年期らしき状態」と捉えられます。
すなわち、女性では先ず更年期があって、更年期に特有の症状があって、その症状が重いと医師が判断した場合に更年期障害と診断されます。
これに対して男性では、病気としてのテストステロンの急激な減少が先ずあって、明確な診断基準によって診断が下され、この状態に診断がつくと、「男性の更年期障害」と呼ばれるようになります。
また、女性の更年期障害は閉経後5年くらいまでに自然に消失していきます。つまり、「一過性の出来事」といえます。
しかし男性の更年期障害は病気ですので、自然によくなることはありません。
テストステロンの急激な減少で起こる症状|男性の更年期症状
○不安、緊張、イライラ、気分の落ち込み
○集中力、記憶力の低下
○不眠、眠気、疲労、筋力低下、関節の痛み
○ほてり、発汗
○頭痛、めまい、耳鳴り
○性機能低下、性欲の減少、朝立ちの消失、頻尿 etc.
男性更年期障害質問表(AMS調査票)
【26点以下】 男性更年期障害には該当しない可能性が高い
【27~36点】 軽度
【37~49点】 中等度
【50点以上】 重度
男性の更年期障害とLOH症候群について
その中で、遊離テストステロンの数値が7.5pg/ml未満の場合、LOH(ロー)症候群と診断されます。
LOH症候群とは加齢性腺機能低下症候群(Late-onset hypogonadism syndrome)の略です。
LOH症候群の診断基準と治療について
LOH症候群の診断は遊離テストステロンの数値で行います。LOH症候群と診断されると、注射によるテストステロン補充療法の適用となります。
先ほど紹介したAMS調査票の数値がいくら高くても、遊離テストステロン値が基準値を下回らない限りテストステロン補充療法は行えません。
現在、我が国で医療保険が使えるのは、注射によるテストステロン補充療法のみです。塗り薬や貼り薬、飲み薬もありますが、これらは医療保険が使えません。
数字で見る男性の更年期障害
①医療機関で更年期障害と診断された男性の割合は
40歳代で1.5%、50歳代で1.7%
②更年期障害の可能性があると考えている男性の割合は
40歳代で8.2%、50歳代で14.3%
③更年期障害を考えたことはない/疑ったことはない男性の割合は
40歳代で90.3%、50歳代で83.9%
※出典:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果
◆更年期障害と診断された男性は100人中1~2人でした。また、更年期障害を考えたことも疑ったこともない男性が8割以上を占めます。しかし、もしかしたらこの中に、精神疾患と誤診されている男性が含まれているかもしれません(症状がとてもよく似ています)。
男性の更年期障害のセルフケア
●以下の食品を自然の食材から摂る
・ビタミンA、B群、C、D、E、K
・亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム
・たんぱく質
・食物繊維
・不飽和脂肪酸
・発酵食品
●以下の食品を少なめにする
・砂糖
・炭水化物
・加工食品(食品添加物)
●以下の食品を断つ
・トランス脂肪酸
・飽和脂肪酸
・アルコール
・カフェイン飲料
●ぐっすり眠るために以下を行う
・毎日7~8時間眠る
・毎朝同じ時間に起きて朝日を浴びる
・朝食を欠かさず摂る
・日中は日光を浴びて活動的に過ごす
・夜は暗い部屋または間接照明で過ごす
・入浴時は湯船につかる
・ヨガやマインドフルネス(瞑想)を行う
●適度な運動をする
●ストレスを減らす
※男性のセルフケアといっても、女性の更年期障害のセルフケアと全く同じです!
テストステロンが減少した男性が特に取り入れたい特有のセルフケア
■筋トレを行う
■マラソンなどの高負荷な運動は行わない
■ゆったりとした下着をはく
■周囲から「すごい」と認められることをする
■女性にいいところを見せる
■女性に触れる(社交ダンスなど)
■女性と話す
■ストレスを軽減する(LOH症候群では最も重要)
生き物としての男性は、やはり女性と接することでテストステロンが高まります。可能な範囲で、なるべく女性と接しましょう。
奥さんや恋人と腕を組んで歩いたり、独身であれば女性と気軽に話のできるクラブやキャバクラに行ったりするのも、テストステロンの観点からは悪くありません。
また、友達夫婦を誘って出掛け、友達の奥さんと話すというのもお勧めです。
※出典:『男性更年期・EDをらくらく克服する方法』 岡宮裕著 ナショナル出版 2017年
副腎をいたわって更年期症状を改善する
副腎は、更年期症状に強く影響する性ホルモンを精巣と卵巣とともに分泌しており、日々を健やかに過ごすために重要な役割を果たしています。
副腎の働き
副腎は、体の状態を一定に保つために必要不可欠なホルモンを分泌しています。
代表的なホルモンとして、副腎皮質から分泌されるコルチゾールと、副腎髄質から分泌されるアドレナリンがあります。
コルチゾールについて
①抗ストレス作用、②抗炎症作用、③免疫抑制作用、④血糖値上昇作用などを有する、生きるうえで必要不可欠なホルモンです。
コルチゾールは、ストレスを受けるたびに脳や体がストレスにうまく対処できるように、きめ細かく調整を行っています。分泌は多すぎても少なすぎても良くありません。
しかし、過剰なストレスを長期間にわたって受け続けると、コルチゾールの分泌が慢性的に増加します。
その結果、睡眠障害や抑うつなどの精神面への影響や、生活習慣病の悪化などにつながると考えられています。
コルチゾールの主な働き
②抗炎症作用 体内の炎症を抑え、解熱鎮痛効果を発揮します。炎症とは生体の大切な防衛反応のひとつです。炎症を起こすことでその部位の修復を促進します。
しかし炎症には大きなエネルギーが必要となります。
命に危機が迫っているような状況では、炎症を抑えることでエネルギーを節約し、その分のエネルギーを命を守る活動に使えるようにします。
③免疫抑制作用 リンパ球を減少させることで免疫反応を抑制し、自己の細胞を過剰に攻撃しないよう免疫機能を適切に調整しています。
危機的状況では免疫機能を抑制することで、エネルギーを生命維持に使えるようにします。
しかし、過剰なストレスを受け続けると免疫力が低下しすぎてしまい、感染症に罹りやすくなります。
高ストレス状態が長期に及びコルチゾールが大量に分泌され続けると、免疫力が低下し癌の発症リスクが上昇する可能性があります。
④血糖値上昇作用 ストレス(外敵)に対処するために血糖値を上昇させます。空腹時にも動けるように、筋肉や脂肪を少しずつ分解し、エネルギー源であるブドウ糖を作り出して全身に供給します。
したがって、高ストレス状態が続きコルチゾールの分泌が過剰になると、高血糖状態が生じることになります。
※出典:『人体の構造と機能』 坂井建雄他著 放送大学教育振興会
副腎疲労について
このような状態を副腎疲労と呼びます。なお副腎疲労は正式な病名ではなく、単に状態を表しているだけのものです。
副腎疲労は病気とは認められていないため、医療保険を使うことができず、治療は自由診療となります。
副腎疲労の症状
副腎疲労の主な症状は以下の通りです。
○疲労感、倦怠感、不眠
○気分の落ち込み、憂うつ、不安、意欲低下、イライラ、楽しさの消失
○記憶力、集中力、思考力の低下
○食欲不振、便秘、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐
○頻脈、動悸、過呼吸、めまい、立ちくらみ
○悪寒、冷や汗
○アレルギー症状(花粉症、鼻炎、蕁麻疹など)の悪化
○性欲の減退
○PMS(月経前症候群)の悪化
○風邪をひきやすい、ケガが治りにくい
○更年期症状の悪化 etc.
※副腎疲労はその症状の特徴から、精神疾患と誤診されやすい体調不良のひとつです。
※出典:『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』 本間良子著 祥伝社
副腎疲労を起こす要因
○様々な心理社会的ストレス(仕事、家庭、経済問題、人間関係など)
○偏った食生活や運動不足といった生活習慣の乱れ
○鉛、水銀、カドミウム、ヒ素、アルミニウムなどの有害物質の体内への蓄積
○過度の飲酒、喫煙
○腸内環境の乱れ(後述します)
○必須栄養素の不足
○歯周病に代表される慢性的な炎症や感染症
※副腎疲労を改善するには、副腎にストレスを掛けている要因を見つけ、それに対処していくことが大切です。特に生活習慣(睡眠、運動、食事)の改善が重要になります。
副腎疲労のセルフケア|コルチゾールの分泌を正常化するには?
なお、それぞれの根拠や作用機序などの説明は省略しています。
●以下の食品を自然の食材から摂る
・ビタミンA、B群、C、D、E、K
・亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム
・たんぱく質
・食物繊維
・不飽和脂肪酸
・発酵食品
●以下の食品を少なめにする
・砂糖
・炭水化物
・加工食品(食品添加物)
●以下の食品を断つ
・トランス脂肪酸
・飽和脂肪酸
・アルコール
・カフェイン飲料
●ぐっすり眠るために以下を行う
・毎日7~8時間眠る
・毎朝同じ時間に起きて朝日を浴びる
・朝食を欠かさず摂る
・日中は日光を浴びて活動的に過ごす
・夜は暗い部屋または間接照明で過ごす
・入浴時は湯船につかる
・ヨガやマインドフルネス(瞑想)を行う
●適度な運動をする
●ストレスを減らす
※ちなみにこちらも、更年期のセルフケアと全く同じです。
副腎疲労に強く推奨される特有のセルフケア
■頑張らない
■砂糖を断つ
■小麦と小麦製品を断つ(グルテン)
■牛乳と乳製品を断つ(カゼイン)
■ネギ、ショウガ、シソ、ミョウガ、タマネギ、ニンニクなど香りの強い食品を摂る
※出典:『疲れがとれない原因は副腎が9割』 御川安仁著 フォレスト出版
副腎と性ホルモンの関係について
一方、副腎では、男女ともにテストステロンとエストロゲンが生産されています。
年齢とともに精巣と卵巣での性ホルモンの生産量が減少していきますが、その後は男女ともテストステロンとエストロゲンの生産は副腎にバトンタッチしていきます。
したがって副腎の機能が低下して、更年期以降の性ホルモンのバトンタッチがうまく行われないと、更年期症状に影響を与えてしまいます。
ストレスがとても高い働き方をしている男女に、生活に支障を与えるほどの強い更年期症状(=更年期障害)が出やすいのはこのためと考えられています。
整理すると、男性のテストステロンは精巣と副腎で生産され、男性のエストロゲンは副腎のみで生産されています。女性のエストロゲンは卵巣と副腎で生産され、女性のテストステロンは副腎のみで生産されています。
しかし更年期に入ると男女とも、どちらの性ホルモンも副腎のみで生産されることになります。
したがって、男女とも更年期をうまく乗り切るには、副腎の機能がとても重要になります。
腸内環境を整えて更年期症状の改善を
そしてもうひとつ、とても重要な機能として、外敵から体を守る免疫器官の機能も持っています。
また、腸内細菌の集まり(腸内フローラ)が、精神疾患を含めて体のさまざまな疾患に関係していることが分かってきました。
体全体の健康を維持するうえで、腸の状態はとても重要な役割を担っています。
腸内環境が悪化するとどうなるの?
腸が炎症を起こすと、コルチゾールの増産が必要となり副腎が酷使されます。この状態が慢性的に続くと副腎疲労が起こります。
するとコルチゾールを分泌できなくなり、ストレスにうまく対処できず、更年期症状が悪化することがあります。
また、本来吸収されずに便として排泄される有害物質が、腸内環境の悪化によって腸から体内に吸収されてしまい、さまざまな症状を引き起こすことがあります。
腸内環境を整える基本的なセルフケア
●以下の食品を自然の食材から摂る
・ビタミンA、B群、C、D、E、K
・亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム
・たんぱく質
・食物繊維
・不飽和脂肪酸
・発酵食品
●以下の食品を少なめにする
・砂糖
・炭水化物
・加工食品(食品添加物)
●以下の食品を断つ
・トランス脂肪酸
・飽和脂肪酸
・アルコール
・カフェイン飲料
●ぐっすり眠るために以下を行う
・毎日7~8時間眠る
・毎朝同じ時間に起きて朝日を浴びる
・朝食を欠かさず摂る
・日中は日光を浴びて活動的に過ごす
・夜は暗い部屋または間接照明で過ごす
・入浴時は湯船につかる
・ヨガやマインドフルネス(瞑想)を行う
●適度な運動をする
●ストレスを減らす
※はいそうです。またまたセルフケアは全く同じですね。
腸内環境改善で特に取り入れたい特有のセルフケア
■制酸剤(胃酸を抑える薬)を必要以上に服用しない
■砂糖を断つ
■小麦と小麦製品を断つ(グルテン)
■牛乳と乳製品を断つ(カゼイン)
■腸を休めるために夕食は少なめにして早い時間に済ませる
■室内のカビを除去する(呼吸や食器などからカビが取り込まれ腸で増殖する)
※出典:『おなかのカビが病気の原因だった』 内山葉子著 ユサブル
メンタルヘルスのセルフケア
基本的なメンタルヘルスのセルフケア
メンタルヘルスで特に取り入れたい特有のセルフケア
セルフケアは全て同じ
そう、心と体を健康に保つための基本的なセルフケアとは、ターゲットとなる不調や臓器は違っても、やることは一緒です。
いってみれば、ここで紹介した基本的なセルフケアは、心身の健康のために欠かすことのできない必要十分な生活習慣といえるものです。
「更年期障害で仕事を辞める」を考察する
長々とセルフケアについて述べてきました。実は、セルフケアに関するどのような情報を見ても、何の実践可能性の考察もなく、「はい、これをやりましょう!」と、セルフケアがサクッと語られています。
しかし、そのセルフケアが、忙しく働いているビジネスパーソンにとって実践可能なものなのかを、これから考えてみたいと思います。
ここから先は、今までの論調とはかなり趣が異なってきます。
セルフケアと仕事の関係や、セルフケアの実践を困難なものにしている日本の働き方などについて論じていきます。
セルフケアの実践を阻害する社会病理
毎日6時間未満の睡眠でジャンクフードを食べ、運動不足で、ストレスだらけの生活を続けていては、せっかく病院に通っても体調不良は改善しません。
逆に、先に紹介したセルフケアをきっちりと実践して通院を継続していただけたなら、必ず体調は改善していきます。
体調不良を改善する方法は確立されています。とても簡単です。今まで紹介したセルフケアを実践するだけです。
でも忙しくて実践できない。
これこそが病理です。体調不良を改善するためには、この社会病理をなんとかしなければなりません。
簡単なセルフケアすらできない日本の労働者
私はセルフケアとして加工食品は食べないでくださいと書きました。ビタミンやミネラルを幅広く自然の食材から摂取してくださいとも書きました。毎日朝食を摂るようにもお願いしました。
これは料理の時間が必要であることを意味します。
さらに、毎日適度な運動をしてくださいとお願いしました。シャワーではなく湯船につかってほしい、副腎と腸のためには小麦と小麦製品を断つようにもお願いしました。
そして毎日7~8時間眠ってくださいともお願いしました。
さて、これらのセルフケアを毎月80~100時間もの残業をしている人たちに実践できるでしょうか。
断言します。不可能です。
生き方を変えずに症状を改善するのは難しい
それは、大黒柱として仕事を持っているために簡単に仕事を辞めることができず、かつその仕事のストレスがとても高い場合です。
強いストレスは更年期症状を悪化させる大きな要因のひとつです。
短い睡眠で、気晴らしも運動もできず、カフェイン飲料やアルコールを飲み続け、手軽で安価な炭水化物と砂糖だらけの食事を続け、会社から理不尽なプレッシャーを受け続けながら、更年期症状だけを軽減することなど不可能です。
仕事を続けながら体調不良を消すには、ストレスの少ない働き方に変えるか、あるいは会社を一定期間休むしかありません。
心身の健康に配慮がある常識的な職場に勤めている方は、仕事をしながらセルフケアを行うことができるでしょう。
しかし、厳しい働き方を余儀なくされている方は、その働き方を改めない限り体調は悪くなる一方です。医療機関で治療を受けていてもです。
日本の働き方はサバイバル|やはり働き方改革は必要
一方で産業側の理屈では、「今まで通りに働いてもらわなければ困る」ということになります。
「アウトプットの量と質が低下したから給料を下げます」と言ってもらえるのならまだ救われているほうだと思います。
我が国の場合、就業規則などの制約で降格が難しく(光でもあり影でもあります)、「給料分は働いてもらわなければ困る」、「同じ給料なのにアウトプットが少ないのは不公平だ」といった圧力が掛かります。
ついには、「同じ給料水準の人たちと同じように働けないなら辞めるしかない」ということになり、結局は退職を余儀なくされるという状況が存在します(メンバーシップ型雇用の負の側面です)。
我が国の働き方について根本的な大転換が必要だと思います。まさに日本でビジネスパーソンを続けることはサバイバルです。
家族という身の回りの世話をしてくれる分身(多くは配偶者)がいなければ全うできない過酷な営みが、我が国の労働のあり方(メンバーシップ型雇用)なのです。
更年期障害で一定期間休職できないのか?
しかし、甘い物は自分の意志次第でいつでもやめることができますから自己責任原則が適用されます。
ところが働き過ぎは、生きる糧を与えてくれる会社から強制される側面もあるため、やめることは簡単ではありません。
残業が等しくゼロでなければ、自己責任としてのセルフケアまたは健康管理などは、絵に描いた餅になってしまいます。
「更年期障害が原因で退職となった」のではなく、更年期症状によって「給料分」働けなくなり、就業規則を正しく適用したことが原因で退職せざるを得なくなったというのが正しい理解だと思います。
更年期障害の場合は身体疾患であるがゆえに、患者の希望通りに「休職の診断書」を簡単に発行できないという事情もあります。
身体科の治療で休職の診断書が発行されるのは入院や手術、感染症など、客観的に見て出勤が不可能な場合に限られるためでしょう。
ちなみに、精神疾患では5年以上も休職を続けている人がいます。5年といえば、女性であれば閉経後に更年期が終わり、症状が自然消失する期間に等しいものです。
働き方だけでなく人事制度の変革も必要
これは時間のかかる壮大な試みですが、「おもてなし」に代表されるような過剰なサービスを見直し、仕事から生じるストレスそのものを低減させる必要があるでしょう。
やはり働き方改革です。
そのためには、経営者が自社で行われる業務を厳選することから始めなければなりません。
自社に存在しない業務は、自社が請け負う仕事ではないのです。
日本社会は今より快適さ、便利さは少なくなるでしょう(海外を旅行した時に感じる不便さやサービスの低さが日本にもある程度は導入されるでしょう)。しかし私たちにはそれを受け入れる覚悟が必要です。
また、属人的な働き方ではなく、チームで業務に携わり、進捗がひと目で分かるファイリングシステムを業務として構築し、誰かが休んでも業務が滞らないようにする。
そしてこれが最も重要ですが、更年期障害などによって仕事のパフォーマンスが落ちたのであれば、報酬も下げられるような柔軟な賃金体系にする。
治療が奏効して元のパフォーマンスに戻ったら、速やかに元の賃金に戻す。これで不公平感はなくなるでしょう。
まとめ
更年期障害もメンタル不調も、副腎から分泌される糖質コルチコイド(コルチゾールが代表格)やカテコールアミン(アドレナリンとノルアドレナリン)などのいわゆるストレスホルモンの分泌を正常化させるような生活を送れば良いのです。
ではどうすればストレスホルモンの分泌を正常化できるのか。
それは、毎日7~8時間ぐっすり眠る、朝から日光を浴びる、夜は暗い部屋で過ごす、加工されていない旬の恵みをまんべんなく食べる、毎日心拍数が上がる程度に体を動かす(ついでに禁酒と禁煙も)。
それでいいし、それしかありません。どれもとても簡単なことです。練習する必要すらありません。
しかし、身を粉にして働いている人たちにとっては、これらの実践が最も難しいところに問題の本質があります。労働時間が長すぎるのです。
更年期障害やメンタル不調で苦しんでおり、仕事を続けるために医療を最も必要としている人たちにとっては、働き方(=生き方)が変わらない限り、その医療は無力です。
投稿者プロフィール
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