Column お役立ちコラム

HSPとは?診断、性格、対処法|ブームの功罪からHSPの本質に迫る

【この記事を読むと分かること】
1.HSPブームの功罪が分かる
2.HSPが既存の科学で説明できることが分かる
3.ブームになっているHSPの定義を知ることでHSPの本質が分かる
4.HSPで苦しんでいる人の対処法が分かる

HSPという概念はとても曖昧でつかみどころがありません。心理学的特性というには射程とする範囲が広過ぎます。

そこで、HSPを肯定的に捉えているニュース記事と、批判的なニュース記事を比較検討することをきっかけに、HSPブームの謎を解き明かしてみたいと思います。

HSPに関するニュース記事の紹介と分析

では、HSPブームに肯定的なニュースと批判的なニュースをそれぞれ見てみましょう。

肯定的なニュース記事

まずHSPブームを肯定的に捉えて報道している記事をご紹介します。

信濃毎日新聞 『HSPブームの背景 生きづらさ感じる人々の受け皿に 自認することで自分の得意・苦手を理解できるように』 2023年11月13日付

(※このニュース記事全文を読むには、信濃毎日新聞の無料会員登録が必要です)

◇◇◇◇

上記のニュース記事には、HSPブームについて概ね以下のことが書かれています。

●HSPを自認することで対処の幅が広がった

●自分がHSPに当てはまることに気づき、特徴や対処法を知ることができた

●自分の得意、苦手を理解できるようになった

●当事者同士でつながることで特性を認め、自分を肯定できるようになった

●HSPを自認することで、自分から刺激の多い環境を避けることができるようになった

●苦手なことを周囲の人に伝えることで特性を知ってもらい、対処がしやすくなった etc.

◇◇◇◇

HSPブームの肯定的な側面として以下のことが言えそうです。

自分の特性を知り対処が可能となり、自分を肯定することができるようになる

なお、HSPブームを肯定的に報道しているニュース記事はとても少なく、上記のニュース記事以外、見つけることができませんでした。

◇◇◇

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批判的なニュース記事

一方で、HSPブームを批判的に捉えて報道しているニュースはたくさんあります。

「HSPブーム×問題点」で検索していただくと、関連記事がたくさん出てきます。

中でも、問題点を分かりやすく、端的に説明しているニュース記事を以下に紹介しておきます。

Yahooニュース 『繊細さんはHSPが原因なの?心理学者が解説する「HSPだから仕方ない」で陥る罠とその脱出法』 2023年6月27日付

東洋経済オンライン 『書籍も多数「繊細さん」ブームに潜んでいる弊害』 2024年2月29日付

◇◇◇◇

HSPブームを批判的に捉える理由として、以下の内容が書かれています。

◆正しい知識を基に行動しなければ医療や支援につながる機会を逃す可能性がある

◆非科学的な情報にだまされてHSPビジネスに多額の出費をしてしまう
 ・カルト
 ・科学的根拠の薄い自費治療
 ・資格ビジネス
 ・経験の薄いHSP専門カウンセラーによる効果のないカウンセリング etc.

◆HSP概念は原因を説明していない。単に現象(症状)を説明しているに過ぎない

◆HSPの原因を特定するためには高度の専門性が必要であり簡単ではない。原因は多岐にわたる

◆HSPを原因にしてしまうと問題の解決を遅らせてしまう可能性がある

◆「自分はHSPだから」が結論になってしまい、個々の症状に向き合うことをしなくなる

◆「HSPは選ばれし人たちで高次の精神性を有している」、「HSPは才能であり能力である」と言われているが、科学的根拠はない etc.

◇◇◇◇

HSPブームに批判的なニュースを整理すると以下のようになります。

HSPブームの言説には非科学的なものが多く、適切な治療などを受ける機会を逃し、効果の薄いビジネスに多額の出費をしてしまう可能性がある


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ニュース記事を分析してみる

HSPブームの肯定的側面と批判的側面を述べてきました。

肯定的側面と批判的側面を含めたHSPブームについてさらに端的に整理すると以下となります。

HSPブームは、生きづらさを感じている人に対処法を与え、自分を肯定できるようにした。しかし、適切な治療機会を逃して非科学的なものに多額な出費をしかねない

これって一体なんなのでしょうか。どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。

単に、埋もれていた特性が社会に発信されただけなのに、どうして当事者が不利益を受けたり、だまされたりするのでしょうか。

ということで次章以降、HSP概念を詳しく分析することで、こじれた糸を解きほぐしてみたいと思います。

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過敏な人に関する科学的な研究成果

それでは今日までにどのような研究が行われているのか、HSPに関する科学的な研究成果を概観してみましょう。

過敏な子供と環境の影響

この理論は差次感受性理論といいます。

差次感受性理論は、成長の過程で環境からの影響を受けやすい子供とそうでない子供が存在する理由について、進化論的な観点から明らかにしようとした理論です。

全ての人が同じ環境要因に対して同じ反応を示すわけではなく、個人差が存在するという考えに基づいています。

感受性の高い子供は、悪い環境から悪い影響を受けやすいだけでなく、好ましい環境からは、より好ましい影響を受ける可能性があることを示した点は注目に値します。

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生物学的な違いと過敏さ

この理論は生物感受性理論といいます。

生物感受性理論は、生物学的な違い、例えば遺伝的な要因や自律神経の反応が、個人の感受性に影響を与えるとする理論です。

極端にネガティブまたは極端にポジティブな環境で幼少期を過ごした子供は、その後の人生において高い感受性を持つ可能性が高いと考えられます。

対照的に、どちらでもない環境、すなわちネガティブとポジティブの中間で育った場合には、最も感受性が低くなると考えています。

生物感受性理論と差次感受性理論はとてもよく似ていますね。まあ、人の感受性についてはこのくらいしか分かっていないともいえるでしょう。

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特別な存在としての過敏な人

この理論は感覚処理感受性理論と言います。

感受性の高さは進化的観点から適応的なものであり、その個人差は遺伝的に決定されており、生涯を通じて変化しにくい特性であると考えています。

感覚処理感受性が高い人は、

①刺激に対する深い認知的処理(D)

②刺激に対する圧倒されやすさ(O)

③情動的および共感的な反応の高まりやすさ(E)

④ささいな刺激の察知しやすさ(S)

という4つの特徴を持っていると考えます(これらをDOESと呼びます)。

この理論の提唱者であるアーロン博士によりますと、感受性が高い上位約20%の人々はHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれ、その他の80%は感受性の低い非HSPであるとして区別しています。

HSP(感受性が高い上位20%の人)は右脳が左脳より活発に活動しており、遺伝的に「違う種類の人々」なのだそうです。

また、HSPは長時間労働やストレスに弱く、「天職を見つけること」、「生計を立てること」、「職場でうまくやっていくこと」が切実な問題になるとしています。

唯一この理論が、「過敏な」(Highly Sensitive Person)として、「人全体として過敏」ということを定義しているようです。興味深いですね。

なお、私たちが日常的に口にする“HSP”とは、この感覚処理感受性理論の中で定義される“HSP”のことです。

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過敏さを包括的にまとめた理論

この理論は環境感受性理論といいます。

包括的な理論である環境感受性理論は、上記の各理論を統合した上で、感受性を以下のようにまとめています。

■環境に対する感受性は全ての人々が持つ特性である(その程度には個人差あり)

■その個人差には様々な情報の知覚および処理の深さが基盤にある

■感受性は遺伝的要因と環境要因の双方から影響を受けることが想定される

■環境感受性理論においては以下の人の存在を想定している
 ①ポジティブおよびネガティブな環境の双方から影響を受けやすい人
 ②特にネガティブな環境から強い影響を受けやすい人
 ③特にポジティブな環境から強い影響を受けやすい人

このまとめに特に目新しいことはなく、そりゃそうだろうという結論ですね。

※出典:『HSP研究への招待』飯村周平著 花伝社



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「人として過敏」はどのように定義づけられるのか

実は私は、HSPすなわち「過敏な」(Highly Sensitive Person)という、「人として過敏」、「その人自体が過敏」という定義づけをすることは極めて難しいのではないかと思っています。

神経の過敏性や感受性の研究は、個別の感覚器官の感受性でしか分析できないのではないでしょうか。具体的には以下です。

視覚過敏:特定の光や色に敏感
聴覚過敏:特定の音に敏感
触覚過敏:特定の皮膚からの刺激に敏感
嗅覚過敏:特定のにおい、かすかなにおいに敏感
味覚過敏:特定の味や食感に敏感
神経過敏:神経が過度に鋭く物事に敏感

これら個別の感受性の研究は進んでいくでしょうが、人として過敏というのは、これら個別の過敏性が、ひとりの人間の中でどうなればHSPとなるのか全然分からないのです。

HSPを自認している人たちも、個別の感覚器官が過敏なのであって、人として過敏なわけではないと思います。

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HSPブームとは「アーロン型HSP」ブームのこと

さて、ここから以降は、ブームになっている特定の“HSP”についてのみ論じていくことになりますが、それは米国の心理学者であるアーロン博士が提唱した「Highly Sensitive Person」のことです。

そしてアーロン博士はユング派の心理学者で、HSP概念にはユング心理学の影響が色濃く反映されていると私は考えています。

先ずは、これから論じるアーロン博士のHSPに名前をつけておこうと思います。今ブームになっているHSPと他の概念としてのHSPを厳格に分ける必要があるためです。

そこで呼び名ですが、「ユング派HSP」でも良いのですが、思案の末、「アーロン型HSP」と呼ぶことにしました。

この記事において「アーロン型HSP」という言葉が出てきた際には、「ユング派の心理学者であるアーロン博士が提唱した、今ブームになっているあのHSPのことを指している」と理解してください。

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「アーロン型HSP」ブームの背景にユング心理学あり

「アーロン型HSP」の話題に入る前に、少し遠回りになりますがユング心理学を知っておきましょう。

私は、今日のHSPブームにはユング心理学の思想が色濃く反映されていると考えています。

HSPブームの功罪を解き明かす前に、ぜひユング心理学のエッセンスを知っておいていただきたいと思います。

ユング心理学の概要と「アーロン型HSP」

ユング心理学の創始者は、カール・グスタフ・ユング(1875~1961)というスイス生まれの精神科医です。ユング心理学という呼び名は通称で、正しくは分析心理学と言います。

ユングは、フロイトに師事して精神分析を学びましたが、その後フロイトの元を離れ、独自の理論を展開しました。

ユング心理学はユング自身の経験に基づいた心理学です。そしてユングは、自分の中に自分以外のもうひとつの人格があることに悩んでいたといいます。

アーロン博士によると、ユングは「アーロン型HSP」であり、アーロン博士自身も「アーロン型HSP」であると告白しています。

ユング心理学がユング自身の経験に基づいた心理学なら、「アーロン型HSP」(感覚処理感受性理論)はアーロン博士の経験に基づいた心理学と思われます。

それではユング心理学のエッセンスを理解するために、主要な概念を簡単にご紹介します。

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集合的無意識

集合的無意識とは、人間の心の奥深くに存在する、個人の無意識を超越した人類共通の無意識のことです。

具体的には、夢や神話、宗教、芸術などの中に現れる共通のテーマやシンボルのことです。

異なる文化圏の人々が同じような神話や昔話、母性の象徴を持っているのは、集合的無意識が影響しているからだとしています。

また、夢の中で見られる共通のシンボルやテーマ、さらには精神病患者に共通した幻覚や妄想も、集合的無意識の表れと考えています。

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元型(アーキタイプ)

集合的無意識が意識に影響を与える際、直接意識に上るのではなく、人類共通のイメージとして現れます。この心的イメージが元型です。

元型は睡眠中の夢のイメージや象徴を生み出す源となる存在とされています。

主な元型を以下にご紹介します。

ペルソナ
ギリシアの古典劇の仮面を意味するペルソナが由来です。

ペルソナとは、私たちが家庭、学校、職場などの社会的な役割や期待に応じて他者に対して見せるもう一人の自分を指します。

例えば、あなたが友人と過ごす時の自分と、上司と接する時の自分が異なるのは、異なるペルソナを使っているからです。

それぞれの場面で最適なペルソナを使うことで、社会生活を円滑に営むことができますが、それが行き過ぎると、本当の自分とのギャップを感じることになります。

アニマ
男性の心の中にある女性的な部分の元型のことです。様々な女性の姿になって、男性の夢の中に現れます。

アニマは男性の内面にある女性的な要素(感情、直感、創造性など)を表します。

男性は対外的に男性らしい態度(ペルソナ)を要求されますが、アニマによってペルソナのバランスを取ろうとしていると考えられます。

アニムス
女性の心の中にある男性的な部分の元型のことです。様々な男性の姿になって、女性の夢の中に登場します。

アニムスは女性の心の中に存在する男性的な要素(論理性や理性など)を指します。

女性は対外的に女性らしい態度(ペルソナ)を要求されますが、アニムスによってペルソナのバランスを取ろうとしていると考えられます。

シャドウ
シャドウとは、自分が知りたくなかった自分のことを指します。

自分にとって望ましくない願望や欲求、道徳に反するような思いや衝動などによって構成されています。

こうした感情や特性を認識して受け入れることで、自己理解が深まり、調和の取れた自己を実現することができるようになるとされています。

グレート・マザー
集合的無意識の中に存在する母なるものを指す元型です。創造、保護、養育、破壊などのイメージを持ちます。

グレート・マザーは私たちの無意識の中でとても強い影響力を持っています。

自然や大地、生命の源として、太古の昔から神話や宗教、文学など、さまざまな文化において共通の表象とされています。

トリックスター
神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破るいたずら好きな人物を指す元型です。

トリックスターは、文学などでステレオタイプなキャラクターとして登場します。日本の昔話などではキツネやタヌキがトリックスターの典型です。

ユングのトリックスターの概念は、個人の成長や社会変革の中で、混乱や不確実性が必然的に存在することを示しているそうです。

◇◇◇◇

※他にも、「永遠の少年」、「永遠の少女」、「老賢者」などの元型があります。興味のある方は調べてみてください。

ちなみに、私が勉強した認知行動療法は以下の考え方でできています。
・思考は脳内フィクションである
・フィクションは検討しても無駄である
・ゆえに思考は放っておいてどんなに怖くても合理的な行動を実践する

ユング心理学とは対照的に、とても単純明快です(人間の苦悩やこころに対する深い洞察がないとも言われますが)。

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ユング心理学のエッセンスとHSP

以上、ユング心理学の概要を見て分かると思いますが、ユング心理学は現代的な視点で見るととても文学的、思弁的、神秘的、ロマン主義的な心理学です。

西洋占星術と相性がよく、占星術師がユング派のセラピストになることもあるそうです。

ユング心理学では、宇宙には人間を超えた大いなる存在というものがあり、個人はその大きな力の中で生かされていると考えます。

そして、無意識からの声(夢です)に耳を傾け、ゆっくりと「私だけの答え」にたどり着くことを目指します。

すなわち、「究極の自分らしさを見い出し、究極の自分として生きる」のです(これを個性化過程と呼びます)。

ユング心理学が治療の対象とするのは、多数派ではなく少数派、成功者ではなく抑圧された者、人間関係や人生に疲れ果てズタボロになってしまった人たちといえるでしょう。

そう、ユング心理学は「マイノリティへの応援歌」でもあるのです。

ユング心理学の最大の特徴は、人生を物語として捉える点にあります。例えば「苦しみの原因は何か?」を問うのではなく、「この苦しみはあなたの人生の中でどのような意味を持つのか」を問います。

苦しみや不幸に意味が見い出されることで、人生が「私の物語」になるのです。

ユング心理学は社会の本流から抑圧された人たちの視点で語られていて、そういう人たちを勇気づける内容を持っています。

ユング心理学の本質は、抑圧された人たちの人生に物語を与え、究極の自分らしさに導くことなのです。

※出典:『自分を再生させるためのユング心理学入門』山根久美子著 日本実業出版社


◇◇◇

この、社会の本流から抑圧された人たちこそ、「アーロン型HSP」だと思うのです(過敏な人に限っていないことに注意が必要です。答え合わせは後ほどに)。

※苦しみや不幸を「物語として捉える」という考え方は、のちのち重要な意味を持ってきますので覚えておいてくださいね。

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ユング心理学は日本人の精神性と相性が良い

ユング心理学は地元のスイス以外ではほとんど知られておらず人気もありません。唯一の例外が日本で、私たち日本人の精神性とユング心理学はとても相性が良いようです。

世界的にも不安が強い国民性、先進国の中でずば抜けた幸福度の低さ、メンバーシップ型雇用の弊害による職場の人間関係の困難さなどなど...

このような、日本人に特有の苦しさをうまく救ってくれそうな心理学として、ユング心理学は一役買っているのかもしれませんね。

日本人は身も心もボロボロになっている人が多いのかもしれません。

そこに救いを見い出すユング心理学、そしてユング心理学の思想がベースとなっているのが「アーロン型HSP」です。

この構造が、「アーロン型HSP」が我が国で大ブームになった理由だと思います。

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「アーロン型HSP」を分析する

さて、やっと本題に入る準備が整いました。

ここからは、ブームとなっている「アーロン型HSP」について解き明かしていきたいと思います。

「アーロン型HSP」に必須の4項目(DOES)

アーロン博士の唱えるHSPの概念を見てみましょう。

まず重要なこととして、アーロン博士の本を読んでも、遺伝要因や自律神経系の高まりなどに関する明確な定義は出てきません。

唯一のカテゴリー概念として、先述したDOESがあります。DOESとは以下の概念の頭文字をとったもので、全てに当てはまる人だけが「アーロン型HSP」だとしています。

詳しく見てみましょう。

D(深く処理する)◆Depth of processing
物事の表面でなく複雑なことや細かいことを認識する時に使う脳が活発に働くため、物事を徹底的に処理したり深く考えたりする。

あれこれ可能性を考えてなかなか決断できなかったり、行動を起こすのに時間が掛かったりする

O(過剰に刺激を受けやすい)◆being easily Overstimulation
自分の内外で起こっている全てにひといちばい気がつき、処理するので、精神的にかなりの負荷が掛かり、それゆえに体も人より早く疲労を感じる。

E(全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い)◆being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular
物事の1つひとつを深く感じ取り、涙もろく、人の心を読むことに長けている。初めてあった人や動物にも共感することができる。

S(ささいな刺激を察知する)◆being aware of Subtle Stimuli
思考や感情のレベルが高いため、小さな音、かすかな臭い、細かいことに気づくことができる。声のトーン、視線、あざ笑い、ちょっとした励ましにも気づく。

しかしプレッシャーや過剰な刺激で疲労するなど、興奮しすぎた状態では、この鋭い察知力は消えてしまう。

※出典:『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン著 青春出版社



ご覧の通り、ヒトの神経の過敏さ定義するものとしてはとても曖昧なものです。

自分で当てはまると思えば当てはまり、当てはまらないと思えば当てはまらないようなものです。

さらにDOESには、あらかじめ「生きづらさ」の内容がちりばめられていることを忘れてはなりません(決断できない、行動に時間が掛かる、精神的に負荷が掛かる、早く疲労する、声のトーンや視線、あざ笑いに気づくなど)。

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「アーロン型HSP」の診断テスト

上の表は「アーロン型HSP」の診断テストです。

23問中「はい」が12問以上あったら、あるいは1つでもとても強く当てはまれば、あなたは「アーロン型HSP」ということになります。

※出典:『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』エレイン・N・アーロン著 講談社



この診断テストもとても曖昧で、質問文をいくら読み込んでも、遺伝要因や自律神経系の高まりなどの明確な評価基準が見えてきません。

また、敏感な人を客観的に抽出するテストに、「痛みにとても敏感だ」、「カフェインに敏感に反応する」など、「あなたは敏感か?」と問うこと自体がおかしい。

例えば、うつ病を評価するテストに、「私は気分が落ち込んでいるのでうつ病だ」という質問に答えるようなものです。

さらに、カフェインに敏感なことがどうして「過敏な人」(HSP)になるのでしょうか。

また、この診断テストにも、あらかじめ「生きづらさ」の内容がたくさんちりばめられていることに注意してください。

現状この診断テストは、「神経が過敏な人」を抽出するテストにはなっていないと思います。

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HSPは素晴らしい! 生きづらい! 精神疾患予備群だ!?

アーロン博士の本やSNS、ネット上のブログなどで世間に拡散されている「アーロン型HSP」のイメージを「HSPあるある」形式で見てみましょう。

先ずは「ポジティブあるある」
・HSPとは元々「いい人」と言われていた人たち
・創造力が豊かで内的生活が充実している
・とても良心的で間違いを犯さず努力する
・物事を深く多角的に考えられる
・誠実で責任感がある
・感受性が豊かで人にやさしい etc.

次に「ネガティブあるある」
・外ではいつも気が張りつめている
・相手の些細な一言で深く傷つく
・相性の悪い人といると苦しくなる
・相手が鈍感だと不快になる
・相手の表情がくもると「嫌われたかも」と気になる
・欠点を指摘されると深く落ち込む etc.

最後に「要注意あるある」
・罪悪感と羞恥心に苛まれてしまう
・トラウマを抱えている
・フラッシュバックやパニック発作を起こしやすい
・恐怖心と不安を感じやすく憂鬱になりやすい
・幽体離脱(解離)を起こし二重人格になりやすい etc.

これらの「あるある」をまとめると、「アーロン型HSP」には以下のメッセージが秘められていることが分かります。

「アーロン型HSP」とは、素晴らしい資質、感性、精神性を生まれながらに持っている選ばれし人だが、社会的な生きづらさを抱えていて、精神疾患になりやすい

まるで物語の主人公のようなメッセージですね。それにしても、こんな物語のような神経の過敏さがあるでしょうか。本来であれば次のような形で表されるはずです。

「HSPとは○○の働きにより、脳の○○の機能が○○になっているため、感覚器官からの入力に対する反応が高い、上位○%のグループである」

これは無味乾燥で素っ気ない。

そうです、「アーロン型HSP」とは遺伝要因や自律神経系の働きを科学的に定義したものではなく、もともと生きづらさを抱えた人たちの人生に意味を与える「物語」といえるのです。

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「過敏な人」ではなく「生きづらい人の物語」

さてここでひとつの結論を導き出したいと思います。

それは以下です。
「アーロン型HSP」は神経の過敏さを表しているのではない。「アーロン型HSP」とは、もともと生きづらさを感じている人たちに、「人生の物語」を与えているものである


◇◇◇

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「アーロン型HSP」は既存の性格特性のひとつ

私は常々「アーロン型HSP」について、わざわざ感受性や神経の過敏さを持ち出さなくても、既存の性格特性で説明できるのではないかと思っています。

それがビッグファイブ性格特性です。

ビッグファイブ性格特性について

ビッグファイブ性格特性とは、人間の性格を5つの因子に分類したもので、5つの因子の組み合わせによってその人の性格を表すことができるものです。

人の性格を表すものとしては、現在最も信頼性が高いといわれています。ここで、ビッグファイブの5つの因子について簡単に説明しておきます。

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1.外向性(快に鈍感な人)

外向性とは、ポジティブな情動の反応に見られる個人差です。

外向性が高い人は快の刺激に(敏感ではなく)鈍感なため、快楽を手に入れるために必死になります(もっともっと刺激が欲しい)。

一方、外向性が低い人は快の刺激に敏感なため、少ない快感で満足でき、快楽の獲得に心が反応しません

社交的であるかや、対人関係が良好かどうかは関係ありません。すなわち、外向性が関わるのは報酬もしくは快の刺激への反応だけとなります。

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2.神経質傾向(悩む人)

外向性とは逆に、ネガティブな情動の反応に見られる個人差です。

脅威を感じる経験をしたとき、どれほどネガティブな気分になるかを予測するものです。恐怖、不安、憂鬱、罪悪感、嫌悪感などが関連しています。

ネガティブな情動のデザイン特性は、偽陰性ではなく偽陽性です。これは致命的にならないように、間違ってもいいからとりあえず警報を鳴らすという戦略によるものです。

多くの時間を悩みながら過ごしていますが、困ったことにほとんどのネガティブ情動には根拠がありません。神経質傾向が高い人の情動は、99%が意味のない悩みで占められています。

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3.堅実性(我慢できる人)

堅実性とは衝動のコントロールに関わる特性です。

堅実性が高い人は真面目できちんとしており、自己をコントロールできます。一方、堅実性が低い人は意志が弱く衝動的で、気の向くままに行動します。

堅実性が高いのであれば、どれほど快感が大きくても、それが危険なもの(例えば薬物やギャンブル)であれば、二度と手を出さないと決心して我慢できます。

このコントロールメカニズムが強力なのが、堅実性が高いということです。

ちなみに、摂食障害の患者さんは堅実性が極端に高く、痩せると決断したら、餓死するまで絶食を続けることができます。

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4.共感性(共感する人)

共感とは他者の情動を推測したり理解したりすることです。

共感性が高い人は協力的で信頼できますが、共感性が低い人はとても冷淡です。

共感性が高いとは他者の心の状態に注意を払うことであり、また決定的なのは、他者の心の状態を、自分の行動を選択する際の基準にするということです。

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5.経験への開放性(連想する人)

経験への開放性は文化的、芸術的活動にどれほど関わっているかを強く予測します。この因子の典型が詩人もしくは芸術家です。

経験への開放性に特徴的なのは、①意味の連想の広がり(比喩による連想の表現)、②因習にとらわれない行為(規範への反抗と打破)、③超自然的な信念、④精神病に似た経験、の4つです。

この特性は連想の広がりが強く、妄想的になりやすい特徴があります。

経験への開放性の中核は、「型にはまらない多面的なアプローチをする創造的な思考」にあります。

※出典:『パーソナリティを科学する』 ダニエル・ネトル著 白揚社



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アーロン型HSP=悩む人+共感する人+連想する人

ここからは「アーロン型HSP」とビッグファイブ性格特性との関係について見ていきましょう。

まず、「アーロン型HSP」に必要不可欠な特性であるDOESとの関係です(DOESの詳細はこちら)。

D:「刺激に対する深い認知的処理」については、ビッグファイブの「悩む人」(神経質傾向)と「連想する人」(経験への開放性)が対応していると思います。

O:「刺激に対する圧倒されやすさ」には、「悩む人」(神経質傾向)が対応しています。

E:「情動的および共感的な反応の高まりやすさ」は、「悩む人」(神経質傾向)と「共感する人」(共感性)ですね。

S:「ささいな刺激の察知しやすさ」には、「悩む人」(神経質傾向)が対応しています。


次に、「アーロン型HSP」の診断テストとの関係です(診断テストはこちら

こちらはいくつもビッグファイブ性格特性に対応する項目を見つけることができます。以下のカテゴリーに沿って探してみるとたくさん出てきます。

①恐怖、不安、嫌悪などが強く、いつも警戒している(神経質傾向)
②他者の状況を察知し、その状況に強く影響される(共感性)
③些細な変化や芸術的要素を深く吟味する(経験への開放性)

ゆえに「アーロン型HSP」は、既存のビッグファイブ性格特性でしっかり説明できそうです。「アーロン型HSP」とは、次の3つの性格特性が共に高い人たちのことといえます。

①神経質傾向(恐怖、不安、憂鬱、嫌悪)
②共感性(共感)
③経験への開放性(思考の拡散、美や芸術を好む)

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ビッグファイブから「アーロン型HSP」を定義する

ビッグファイブ性格特性は信頼できる研究が進んでおり、各因子の遺伝要因、自律神経系の働き、神経伝達物質の作用との関係が明らかにされています。

ゆえに上記で挙げた3つの因子を読み解くことで、「アーロン型HSP」の本質が見えてくると思います。

ということで、ビッグファイブの中の神経質傾向、共感性、経験への開放性の3つの因子をさらに詳しく見ていきましょう。

悩む人(神経質傾向)

神経質傾向が高い人は感情や記憶を処理する偏桃体が活発に活動しています。逆に、ネガティブな情動反応を抑える海馬の容量が小さく活動が低くなっています。

ストレスホルモンであるアドレナリン、コルチゾールの分泌量が多く、セロトニンという心の安定を司る神経伝達物質の分泌量が少ないことも特徴です。

神経質傾向というのは、生物学的には、「ストレスに対する個体ごとの自律神経系の反応のばらつき」と定義できます。

思考パターンは今この瞬間ではなく、記憶をもとに過去と未来を行き来します。神経質傾向を示す最もはっきりした指標は憂鬱が引き起こされやすいことです。

不安障害、各種恐怖症、PTSD、摂食障害、強迫性障害、パーソナリティ障害、統合失調症、メランコリー型うつ病などは、神経質傾向と強い相関があります。さまざまな精神疾患の発症には神経質傾向の高さが影響しています

ちなみに、神経質傾向が極端に高い人が境界性パーソナリティ障害です。

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共感する人(共感性)

共感性には性差が認められます。これは、男性ホルモンのテストステロンが影響しているからです。男性はテストステロン値が高く、女性に比べて共感性が低くなっています。

ちなみに、女性にテストステロンを注射すると、共感的行動が少なくなることが分かっています。

共感性が極端に高い人が依存性パーソナリティ障害です。

ほとんどが女性で、この障害を持つ人はその極端な共感性ゆえに、自分にとっての必要性や選択の自由、楽しみなどを完全に犠牲にして他者の欲求を満たそうとします。

DV男から離れられない、ダメ男に貢いでしまう、ホストクラブで大きな借金を作るなどです。

共感性が強いと、可哀想な人を特別扱いするなど、共感した対象を過度に優遇することがあります。

共感性には授乳、抱擁、親しい人との会話などで分泌されるオキシトシンという幸せホルモンが影響しています。

オキシトシンを吸入すると可哀想な人を特別扱いするようになります。

オキシトシンによって親密な対象への「愛と絆」が増加することによって、結果的に部外者を排除するようになります。

差別は共感から生まれるというのは、不都合な真実のひとつですね。

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連想する人(経験への開放性)

経験への開放性は、拡散的あるいは創造的な思考が特徴です。

経験への開放性が高まると、他者との親密な関係を嫌い、孤独を好むようになります。

また、とても高い芸術的な感性や直観力があります。何か不思議なものに意味を見い出したり、幻視や幻聴を経験したりすることもあります。

経験への開放性が極端に高い人は、統合失調症の予測因子になり得ます。

※出典:『スピリチュアルズ』橘玲著 幻冬舎



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「アーロン型HSP」は精神疾患予備群かもしれない

以上、「アーロン型HSP」に関連するビッグファイブの3つの因子を見てきましたが、かなりの部分で「アーロン型HSP」を説明しています。

また、先ほど紹介した「アーロン型HSP」に秘められたメッセージそのものといえます(素晴らしい資質、感性、精神性を生まれながらに持っている選ばれし人だが、社会的な生きづらさを抱えていて、精神疾患になりやすい)。

そしてもうひとつの結論が導き出されます。それは、

「アーロン型HSP」のDOESと診断テストは、ありとあらゆる精神疾患予備群を抽出している可能性がある

アーロン博士が潜在的な精神疾患を抽出することを意図していたかは分かりませんが、これはこれですごいことだと思います。

しかし、ここで重大な問題が生じます。

それは、「アーロン型HSP」を診る、または「アーロン型HSP」を治すということは、現在認知されているありとあらゆる精神疾患を診ることができて、かつ治すことができるということを意味します。

とても広い知識と解決技法を身につけていなければ、「アーロン型HSP」には歯が立ちません。これは相当なスキルを要求されそうですね。

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「アーロン型HSP」を定義づける

ここまできて、「アーロン型HSP」を定義づけすることができそうです。いまブームになっているHSPの定義は以下となります。

「アーロン型HSP」とは、ユングまたはアーロン博士の心理的な投影で、共感する能力が高く、思考が深く独創的で、日常の様々な出来事に悩み、精神疾患に陥りやすい人たちのことである。過敏性だけの概念ではないが、なぜか「過敏な人」と名づけられた


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「アーロン型HSP」の対処法

「アーロン型HSP」とは何かという結論が得られたところで、最後に対処法を考えてみたいと思います。

生きづらさを抱えている人たちはどうすれば良いのか、そのヒントになれば幸いです。

ユング派の心理療法(夢分析)を受ける

これまで見てきたように、「アーロン型HSP」はユング心理学の思想が取り入れられ、ユング派の心理学者であるアーロン博士によって提唱されました。

したがって、「アーロン型HSP」に当てはまる方は、まずはユング派の心理療法(夢分析)を受けるのが第一選択になるでしょう(既に精神疾患を発症している方を除く)。

ユングの心理療法は無意識を強調しています。そして、「宇宙の中で生かされている私」という思想を持つため、自然科学では説明できないスピリチュアルな世界に興味がある方には特にお勧めかもしれません。

また、現在の生きづらさに人生の意味を見い出し、究極の自分として、自分らしく生きていきたい方にもお勧めでしょう。

私はユング派のトレーニングを一度も受けたことがありませんので、カウンセリングがどのように進むのか分かりません。また、全国各地でユング派の心理療法が受けられるのかも分かりません。

とはいえ、興味のある方はお近くのユング派のカウンセリング施設を探してみてもいいのではないでしょうか。

自身も「アーロン型HSP」といわれるユングの経験によってユング心理学は創始されました。

そのユング派の心理学者であり、かつ自らも「アーロン型HSP」を自認するアーロン博士が提唱したのが「アーロン型HSP」です。

「アーロン型HSP」に当てはまる方には、ユング派の心理療法が向いていると思います。

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「アーロン型HSP」をいったん離れて全ての可能性を洗い出す

生きづらさの原因を知り、そこに具体的に対処し、現状を打破したいと考えている方は、「アーロン型HSP」の考えからいったん離れる必要があります。

ここまで見てきたように「アーロン型HSP」は、単に「過敏な人」(HSP)なのではありません。

自律神経系の反応のばらつきや神経伝達物質の遺伝的な働きによって、日常の様々なことが悩みの原因となり、ありとあらゆる精神疾患に親和性を持っている可能性があります。

あなたの生きづらさの原因を、あらゆる可能性を排除せずに分析することは、とても重要なことだと思います。私としてもこのようなご相談は大歓迎です。

私のカウンセリングでは、「HSPの特性は~」、「HSPの症状は~」など、HSPを主語にして語ることはありません(というか、そんなことはできませんし意味もありません)。

もっと具体的に、「あなたが不快に感じる〇〇は~」、「あなたに生じている〇〇の症状は~」など、あなたの症状を主語にした、個別の課題に焦点を当てます。

そして、その課題に具体的な対処行動を設定していきます。

「アーロン型HSP」は対象とする射程があまりにも広すぎるので、心理的な要因だけではなく、幅広い精神疾患の見立てや治療ができるカウンセラーに相談するのが良いでしょう。

急ごしらえの「HSP専門カウンセラー」に相談するのはお勧めしません。

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相場以上のお金を絶対に支払わない

HSPに批判的なニュース記事にもありましたが、非科学的な情報にだまされて多額の出費をしてしまうことに注意しましょう。

復習ですが、「アーロン型HSP」は既存の性格特性で説明できるものです。また、すでに知られているあらゆる精神疾患の予備群といえます。

ということは、何か新しい対処法や治療法があるわけではありません。既存の知見で十分に対応可能です。

ただ、射程があまりにも広すぎるので、正確な見立てが難しいというだけです。

HSPに対応するからといって特別な費用が生じることはありません。相場より著しく高額な価格設定には注意してください。だまされている可能性があります。

さらに、「HSPの最新メソッド!」などを売り文句にしている商売は、間違いなく最新ではないでしょう。

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まとめ

HSPに関するニュース記事を手掛かりにして、「アーロン型HSP」について考察してきました。

私は科学者ではないので、かなりの主観を交えながら結論じみたものを導き出してみました。稚拙な論理展開であることは十分承知しています。

しかし、HSPブームの功罪について、自分なりに頭が整理されたと感じています。

とてもつかみどころのないHSPブームに乗って人生の大きな決断をしようとしている方がいらっしゃいましたら一度立ち止まってください。

その決断は本当の専門家に相談してからでも決して遅くはないと思います。

射程が広すぎるがゆえに危険を伴う「アーロン型HSP」ブームを、人生を豊かにする方向で活用して(楽しんで?)いただけたら嬉しく思います。

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投稿者プロフィール

松村 英哉
松村 英哉精神保健福祉士/産業カウンセラー/ストレスチェック実施者資格/社会福祉施設施設長資格/教育職員免許
個人のお客様には、認知行動療法に基づくカウンセリングを対面およびオンラインで提供しています。全国からご利用可能です。

法人向けには、メンタルヘルス研修やストレスチェック、相談窓口の運営を含む包括的なサポートを行い、オンライン研修も対応。アンガーマネジメントやハラスメント研修も実施し、企業の健康的な職場環境づくりを支援します。